作品「反乱するイメージ」と吃音症について。About my work "Revolting Image" and stuttering.


反乱するイメージ / Revolting Image , 2013 , silk screen , ink , oil , alkyd on cotton canvas,

130.2×144.6×6.2 cm (51.3×56.9×2.4 in), private collection, Germany.

 

 上の画像の「反乱するイメージ」は、2009年制作した作品「ヒトリアソビ」と同じテーマであり、セルフカウンセリング的な意味合いの強い作品です。
「ヒトリアソビ」を制作する数ヶ月前に、私の画面に出てくる「ゴチャゴチャした塊」は、私の「吃音症(きつおんしょう)」と関係があることに気が付きました。

「どもり」などとも言われる吃音症なのですが、聞き慣れない方は2010年に公開された映画の「英国王のスピーチ」を見ていただくと分かりやすいと思います。

 

 

ヒトリアソビ / Play on His Own , 2009, silk screen, watercolor, oil, alkyd, pencil on canvas,

116.8×116.8 cm (46×46 in), private collection, USA.

 

 

2008年末に「TEXT」のページで紹介している、ロディオンさん(当時はフリーのキュレーターであり、武蔵野美術大学の大学院生)から取材を受けました。

武蔵野美術大学の学園祭で開催されたグループ展の作品(「かくれんぼ。」)を見て(厳密には展示は見れなくて展示用のホームページから作品を見たとのことです)、是非取材をしたいとのことで私の大学までお越しいただきました。

そのときに、私の作品の中に精神的に不安を感じる要素の指摘がありました(ロディオンさんは、別の大学で精神分析も学んでいました)。

そこで、私は描くことに強いリアリティを感じていた、画面の中のゴチャゴチャした塊と、自分の吃音症との関係性が見えてきました。

 

 


かくれんぼ。 / Hide and Seek. , 2008, watercolor, oil, alkyd on canvas, 91×11.67 cm (35.8×46 in)

 

 

 

 具体的には、私の吃音症の症状を一度図にしてみようと考えました。

それをやってみたところ、自分の中ですごく納得がしました。

それは、私の頭の中に様々なイメージがあるのに、言葉として発するときに繋がっている出口が小さく、イメージが歪み、圧縮されて断片の塊として出てくるというイメージでした。

また、私は小さい頃にたまに見る夢がありました。

それはクレヨンで子供が描いたような二次元的な世界で、原っぱにチューリップが咲いていました。

それを潰そうとグレーの大きなゴミのような塊が徐々に迫って来て、チューリップが潰される瞬間に息苦しくて目が覚めるという夢でした。

このようなものが、私の作品に出てくるゴチャゴチャした塊にリアリティを感じることと関係していることに気が付きました。

 

 ただ、私の画面に出てくるゴチャゴチャした塊は、上記の塊そのものではなく、飽くまで私の根源としてあるものです。

また、それとは別に私は絵具の物質感の違いや明暗のコントラストなどの、差が強ければ強いほど上手く反応出来るということがあります。 

ゴチャゴチャした塊を描くときは、最初から全ての形が決まっている訳でなく、最初に様々な質感の違う描き方をしたり、絵具を削ったりして偶然性を生み出します。

そこから、壁のシミが何かの形に見えるような感覚で、「ここをもう少し描くとこう見える」というな感覚で即興的に反応しながら描いていきます。

自分としては、ゼロから全て描き出すというよりも、様々質感の交通整理をするような、合気道のような感覚が近いです。

それは近年の作品にも共通して大きく関係しています。

 

 また、作中の子供の写真は私の子供時代の写真をシルクスクリーンで画面に印刷しています。

シルクスクリーンは像としては、はっきり見えますが存在感が薄く、映像的に見えるので「体験した記憶の残像」のようなものとしての意図があります。

 

 

ヒトリアソビ / Play on His Own(2009) 部分

 

 

集積するリズム / Accumulation of Rhythms(2009) 部分

 

 


反乱するイメージ / Revolting Image (2013) 部分

 

 

共鳴 Ⅰ / Resonance Ⅰ (2009) 部分