「かくれんぼ。」は絵画構造に関しての戯画① My work, "Hide and Seek." is a caricature about the structure of painting.①


かくれんぼ。 / Hide and Seek. , 2008, watercolor, oil, alkyd on canvas, 91×11.67 cm (35.8×46 in)

 

東京国立博物館で数日前まで「国宝 鳥獣戯画のすべて」という展示が開催されていました。

緊急事態宣言による美術館の閉鎖期間などもあり、さらにチケットは定員数が決められた予約制でしたので私は見に行くことが出来ませんでした。

今回はその「鳥獣戯画(鳥獣人物戯画)」と関連のある私の作品「かくれんぼ。」について書きたいと思います。

 

まず、このページのタイトル通り「かくれんぼ。」は絵画構造の戯画的な表現であり、それは私の近年の作品と共通するテーマです。

具体期には絵画の側面の問題や、描かれた空間性(イリュージョン)と物質性や平面性、支持体の裏側などの「絵画構造として曖昧な部分や普通は認識されない部分」を自分でも楽しみながら描けた最初期の作品です。

 

 

 

「かくれんぼ。」写真左から左右の側面、作品の裏側、作品の左上上面

Fusion Ⅰ, 2015, oil, alkyd, acrylic on white-hemp,  black-hemp, cotton-hemp, canvas, 98.1×108×6.2cm(38.6×42.5×2.4 in)

Fusion ⅩⅢ, 2019, alkyd, acrylic on linen canvas, 98.6×108.4×6.2 cm(38.8×42.7×2.4 in)

Roentgenpainting 53 , 2020, mixed media , H15.3×W15.3×D15.5cm(H6×W6×D6.1 in), private collection, Japan


< 近年の作品で表面的に見ると関連がなさそうな作品を選んでみました >

 


 

表面的に見ると「かくれんぼ。」は近年の作品と比べて具象性が強いので関連がまったくないと考える方もいると思います。

この作品は鑑賞者への掴みとして楽しく遊んでいる様子を使って注目させる意図はありますが、同時にそれはこの作品の絵画構造についてのアプローチを隠しています。

作品名の「かくれんぼ。」にはそのような重層的な意味があります。

 

また、この「かくれんぼ。」はちょっと特殊な条件で描いた作品なので先に説明したいと思います。

この作品は私が大学の学部1年生時に描いたもので武蔵野美術大学で開催される「五美大交流展」に出展しました。

そのときのテーマが「穴」というもので「かくれんぼ。」の「。(句点)」も穴に掛かっています。

画面下の中央付近にも穴がありカエルが中から覗いてたりし、左には木の洞を描きました。

 

それら表面的なこととは別に「絵画構造の穴(認識的な意味)」も表現しています。

以下具体的に書きたいと思います。

 

 


●絵画構造の曖昧な部分や普通は認識されない部分に疑問を投げかける。


「かくれんぼ。」写真左から左右の側面、作品の裏側、作品の左上上面

 

 

 

まず、上の写真に沿って説明します。

STETEMENTのページにも書いてありますが「絵画の側面」に対してどのように扱うかは私の大きな疑問であり、絵画構造について考えたスタートでもあります。

例えば、側面と正面を分けることに違和感が当時からあったのでその両面に繋がっているウサギを描いています。

また側面からはみ出る部分は作品の裏側に描いています。

作品の裏側の写真の右上や右をみるとウサギの顔や手足の部分が描かれているのがわかると思います。

 裏側にはその他にも、

 

①作品表側の中央付近に描かれた「木の枝に乗っているカエル」が背景のさらに奥に行こうとしている絵を逆からみた状態。

②木枠の上を歩いて木枠とキャンバスの間の隙間に入ろうとしているウサギ。

③サインの横にいるカエル。

④偶然できた絵具の跡を囲ったり擦ったりした形。

 

が描いてあります。

「かくれんぼ。」を描いたときには、まだ明確な答えが出ていませんでしたが私は側面を描かないことに大きな疑問がありました。

それは正面だけで描くとシールのように表面がベリっと剥がれるようなそのような違和感があったからです。

それに対して側面まで描くととてもしっくりと来る実感がありました。

また、私の予備校時代に大変お世話になった画家の村上弘人先生という方が側面まで描いた作品がありその影響もあります。

 

予備校時代その先生にこんな内容の質問をしたことがありました。

「『絵画は平面』といいますが支持体の角(フチ)には丸みがあります。本当に平らな部分までしか描かないと角の部分は塗り残したキャンバスの枠が出来てしまうと思います。『絵画の平面』とは角の丸みのどこらへんまでとされるのでしょうか?」

美術史の本を読んだ中で思った素朴な疑問でした。

内容から具体的にはモーリス・ドニの絵画論の話を読んだのだと思います。

これに対して先生は「まぁ、人それぞれだろう」という内容のお話でした。

もちろんですが絵画をどう捉え、何を表現するかによって支持体の扱いは変わます。

 

裏に描かれたものはこのような「絵画構造として曖昧になっている、または普通は認識されない部分」を自分なりに考え描いています。

ならば支持体の裏と表の関係。

ならば布と木枠やまたその隙間という物理的に違うものを同じ空間として見せるイリュージョン。

特にこれらは今自分で見てもなかなか面白く興味深い表現です。 

 

 

木枠に布を張った支持体の角(フチ)は丸くなります。パネルであれば直角にできるかもしれません。

 


作品の長期保存や保護についての意識


細かい話ですがキャンバスの裏地は基本的に絵具で描くための処理がされていないので特に油性の絵具などを使うと長期保存の場合、布が劣化してしまう恐れがあります。

また、何も描かなくて湿気でカビが生えるしまうこともあります。

 

そのようなことで、この作品を含め私の作品は下地の処理を裏側にもしています。

この作品の場合はジェッソを塗っています。

最初期の作品から作品の長期保存や保護については私は意識的に気にしていますがその話は多少長くなるので近いうちにまた書ければと思います。

 

 

 


「かくれんぼ。」部分

 

長文になりましたので今回はこれで終わりたいと思います。

次回は「かくれんぼ。」の鳥獣戯画を引用した理由表面に描かれた内容について書いていこうと思います。